HSDPA:モバイル通信を高速化した技術
第三世代携帯電話、通称3Gは、従来の携帯電話よりも高速なデータ通信を可能にした画期的なものでした。しかし、技術は常に進化するものであり、3Gの登場から間もなく、更なる高速化への期待が高まりました。そこで登場したのが、HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)と呼ばれる技術です。
HSDPAは、3Gの通信方式であるW-CDMAを進化させた高速データ通信規格です。従来のW-CDMAでは、データを送受信する際に、音声通話と同じように回線を占有していました。そのため、データ通信の速度が制限されがちでした。一方、HSDPAでは、データ通信をパケットと呼ばれる小さな単位に分割し、必要なときにだけ回線を占有するという仕組みを採用しました。この仕組みにより、回線を効率的に利用できるようになり、結果としてデータ通信速度の大幅な向上が実現しました。
HSDPAの登場は、携帯電話の利用シーンを大きく広げました。従来のW-CDMAでも、ウェブサイトの閲覧やメールの送受信は可能でしたが、速度が遅いため、快適に利用できるとは言い難いものでした。しかし、HSDPAの登場により、動画視聴や音楽ダウンロードなど、大容量のデータ通信を必要とするサービスも快適に利用できるようになりました。これは、携帯電話が単なる通話機器から、インターネットや様々なサービスへの入り口となる端末へと進化する上で、非常に重要な役割を果たしました。